“カンボジアのガンジー”と呼ばれ、ノーベル平和賞の候補に4回推薦され、カンボジアのすべての国民から尊敬されるだけでなく、多くの国の人々からも愛されたマハー・コーサナンダ師が3月12日、滞在先のアメリカ合衆国マサチューセッツ州の病院で逝去されました。享年78歳。
師は1929年にカンボジアのタケオ州に生まれ、14歳で出家。プノンペン、バッタンバンの仏教大学を卒業し、さらにインドのナーランダ大学で仏教学を学びました。その後タイの寺院で瞑想修行中にカンボジアが内戦になり、帰国できなくなりました。1978年カンボジア難民のタイへの大量流入を見て、即座に難民救援を開始しました。それだけではなく、海外に定住したカンボジア難民支援に奔走。海外や国境に数十のお寺を建設し、人々の精神的支柱となっていました。また、政治や宗教を超えてカンボジアのみならず世界の平和の実現に積極的にかかわり、世界の宗教者、バチカンのヨハネ・パウロ2世やチベットのダライラマ法王、それからSVAの松永会長や故有馬師とも親交がありました。
1992年4月にはカンボジアの復興、和平の実現に向けて第1回目の「ダンマ・ヤトラ」(法の行進、平和行進)を行い、第2回目は1993年5月、UNTAC(国連カンボジア暫定行政機構)による国民総選挙の直前にアンコールワットからプノンペンまで平和行進し、数千人の市民がこれを出迎えました。第3回目は1994年、和平に参加しなかったポルポト派の解放区への平和行進では、政府軍との戦闘に巻き込まれ2人がなくなりました。1995年は戦後50年、アウシュビッツからカンボジアを通って、広島、長崎までの平和行進でした。今年は第17回目に当たりますが、平和行進の時に配られるチラシにはいつも2つの言葉が書かれています。
一つ目は、仏陀の説いた「ダンマパダ」(法句経)の一節です。
憎しみは憎しみによって消えることはない。
ただ慈愛によってのみ癒される。
これは古よりの永久の真理である。
もう一つは、コーサナンダ師の著書、「Step By Step」の言葉です。
カンボジアの苦しみは深い
この苦しみから偉大な慈悲が生まれるのです
偉大な慈悲は平和な心を築きます
平和な心は平和な人を築きます
平和な人は平和な家庭を築きます
平和な家庭は平和な町や村を築きます
平和な町や村は平和な国家を築きます
平和な国家は平和な世界を築きます
生きとし生けるすべてのものが
幸福で平和に生きられますように
「微笑みの祈り」野田真里、馬籠久美子訳より抜粋
そして、さる3月17日、18日、かつて師がおいでになったプノンペンのサンパウ・ミア寺で葬儀(初七日)があり、多くの人々が別れを惜しみました。 最後に、2500年前、お釈迦様が沙羅双樹の下でお亡くなりになった時に、アヌルッダと言うお弟子さんが唱えた詩をご紹介し、静かに故マハー・コーサナンダ師のことを思い、ご冥福をお祈りしたいと思います。
「心安らけき救済者は、 いまや入る息も出る息もない。 欲なき者は寂静に達し、 聖者はいま滅したもうた。 ゆるぎなき心をもて、 よく苦にたえたまい、 燈火の消ゆるがごとく、 心の解脱をとげたもうた」
*「仏陀」増谷文雄著より抜粋
手束耕治