「あれ、どうしてこんな人家のないジャングルたくさんの車が停まっているのだろう」そう思いよく見ると、ジャングルを切り開いた未舗装の道路に架った橋に大型トラックがはまっていた。トラックの重みで、板切れを並べただけの橋が壊れたのだった。どうみても人力で持ち上げられるようなトラックではない。 少なくとも4トンはある。トラックの運転手たちは、橋にはまったタイヤを何とかしようとしているが、どうにもなりそうもない。 カンボジア人たちは、皆、黙ってその作業を眺めている。上り、下りともに車が通行出来ずに停車している。上り、下りとも迂回する道路は無い。元の道路を引き返して迂回すると少なくとも5時間はかかるという。
橋の回りの人たちに聞くと、「もう2時間も待っているが、動く気配はない」。それでも無言で皆、待っている。こちらは、1時間後には、辺境の村の小学校の建設の調印式が二校あり村人も子どもたちも待っている。いつまでもここで唯、待っているわけにはいかない。日も暮れそうだ。そこで、辺りを良く見ると幸運にことに厚く頑丈な板が2枚あった。この板を橋に架ければ、我々の車は、4駆動なので何とか通れそうだ。この話をスタッフの中でも学校建築のエンジニアに提案すると「いや、この柔らかい土では、路肩が崩れて車が転倒してしまいます。それに反対側に土が山盛りとなって車が通過出来ません」。
しかし、板に乗ってみると頑丈だった。「路肩は、木と石で補強すればいい。山盛りの土は、崩せば車が通過出来る」と主張。さらに幸運なことに、スコップが一つだけあった。誰もやらないなら俺が一人でやろうと考え、まず、周囲の人に手伝ってもらい二枚の板を車の通れる幅に並べた。何とか橋になりそうだ。次は、スコップで山盛の土を崩し始めた。スコップは、一つしかない。靴はドロドロ、汗はびっしりだ。そのうち、今までじっと座っていた女性たちも、山の中から木の棒を持ってきて土を崩す手伝いを始める。一人、二人と人数が増えていった。
しかし、スコップも一つではどうにもならない。そこで、スコップを借りるためにスタッフを近くの村まで車を走らせた。スコップ5丁と元気そうな若者が5人到着。さらに土の中から板をもう一枚、見つけて臨時の橋を補強した。弱かった路肩もいつのまにか、それぞれがあちこちから石や木を集めて頑丈になった。
「これなら行けそうだ」とまず、私たちの四輪駆動の車で橋を渡り道を作ることにした。見事に通過。そして、各車がそれに続いた。絶望と諦めで、唯、黙って座っていた人々から歓声と拍手が沸いた。感動的だったのは、どうにもならず、ただ待つだけという絶望のどん底の中なんとか、橋が架けられそうだ。なんとか解決の道がとなったら、老若男女を問わず皆が自主的に自分の出来ることを始めたこと。見ず知らずの人たちが、泥と汗だらけらなって、声を掛け合い協力して橋をかけたことは、私にとっても忘れられない経験となりそうだ。
カンボジア人の同僚たちは、「外国人の所長に、解決方法を提案されて、それは無理です」と、即座に言ってしまった自分が恥ずかしいです。」と、いい頭を掻いた。時に、外国人の地元の常識にとらわれない発想も、役に立つものだと思った。それにしても、雨季の農村では、色々なことが起こるものだ。
写真上:ジャングルを開いた未舗装道路に架る橋ではまったトラック
写真中:解決方法が見えて、それぞれが手伝いを始める
写真下:仮設の橋が架かり車が無事通過