カンボジアの地方の学校でよく見る光景があります。研修会を始めたばかりの学校に、配布した備品や図書館の状況をチェックするために学校を訪問すると、新しい絵本はガラス棚の中に大切に保管され、厳重に鍵がかかっています。
これでは子どもの手に本は届きません。スタッフと一緒に本を並べ、時には図書箱も本棚の代わりとして使用し子どもの手に取りやすい場所に置きます。それでも、子どもたちは遠くからその絵本を眺めるだけで、手に取ろうとはしません。初めて目にする絵本。初めて手にする絵本。子どもたちもどのように扱っていいのかわからず、戸惑っているのです。
「手を綺麗にして、両手で本を持って1枚1枚ページをめくるんだよ」図書館員のこの一言で、子どもの表情は一変します。これ以降は、どの子も夢中で絵本を読みます。本がとても高価で身近にないカンボジアの子どもの大半が、教科書以外の本を手にすることはほとんどありません。そんな子どもたちと絵本をつなげる大切な役割が図書館員なのです。図書館員なくして、本や図書館は子どもの手には届かないのです。
図書室設置と図書館員の選出を進めている教育省も、図書館員を育てる所までは手が届いていません。図書館員が将来、子どもと絵本をつなぐ強力な磁石となるためには、専門の知識を得、子どもの目線に立った活動を行い、居心地の良い環境を作ることが必要です。子どもたちが絵本を通して将来に夢と希望を持つためにも、今、図書館員を育てることが必要なのです。
鈴木晶子