タイ西北部ターク県ウンパン郡にヌポ難民キャンプがある。人口は約12,000人。仏教徒、キリスト教徒、イスラム教徒が共存している難民キャンプだ。
SVAが同難民キャンプで図書館活動を開始したのは2002年1月。同年5月に2館の図書館を開館した。活動開始に伴い、図書館委員会を設置。自治組織である難民キャンプ委員会がメンバーを選出した。図書館委員長、副委員長を柱に計9名のメンバーで構成された。
実はヌポ難民キャンプはSVAが活動する前から図書館が存在していた。と言っても竹で作られた建物はかなり老朽化しており、本も古くなっているものが多かった。でも自分たちで図書館を作ったことがすごい。当然、建物や本を支援してくれた団体がいたのだが、その後は難民自身の手でどうにか運営を行っていた。
この図書館の運営・管理をしていたのが、図書館委員会のメンバーになった副委員長のバレー氏。イスラム系カレン人。カレン語があまり理解できずビルマ語を話す。図書館や本に対する彼の思いはとても熱く、SVAが図書館を開始することを誰よりも喜んでいてくれてた。だが、彼との戦いが始まったのはそれからすぐのことだった。
すでにキャンプ図書館が存在することから、新規で1館を建設し、既存のについては老朽化が進んでいいることから建て直しをすることになった。これについては特に議論もなく、双方納得の上で合意。続いて、図書館のデザイン、子どもの活動、大人への本の貸し出しサービス等々、より重要な内容が話し合われていく中でお互いに譲らない議論が始まった。図書館をこよなく愛するが故にだろうが、SVAの提案する内容よりはこちらの方がいい!と自分たちがこれまでやってきたやり方を押し付けようとするのだ。今までのやり方が決して悪いとは言っていないし、ただもっと多くの難民の人たちに利用してほしい、その為にはこういうやり方もいいのではにですか?と話し合おうとしているこちらの姿勢はあまり受け入れてもらえなかった。こういう会議を何度も繰り返し、ようやく開館までに漕ぎ着けた時には本当に嬉しかった。
でもその後も今も彼との戦いは続いている。現在、7ヶ所の難民キャンプに22館の図書館があり、それらを維持・運営していかなければならず、当初の頃のようにヌポ難民キャンプを頻繁に訪問することが出来なくなった。しかし、現地の図書館スタッフが定期的にモニタリングを行い、活動状況や問題点などを把握している。3ヶ月に一度は図書館委員会との会議があるためその時は私もスタッフたちと訪問しているが、以前と変わらず、ああすべきだ、こうすべきだ、とまあ本当に色々と言ってくる。当然、納得のいかないとはこちらも反論をするが、他の図書館委員会メンバーやSVAのスタッフたちは彼と私の一騎打ちの戦いにあまり関わらないようにしようとしてか、途中からあまり発言をしなくなる。
昨年末の会議終了後、「君と話をしていて胃が痛くなった!」と言われた。私は胃ではなかったがしゃべりすぎたせいもあり、頭がふらふらしていた。でも最近はこれは議論が活発に行われた結果だと思えるようになった。彼の図書館に対する思いも十分に理解出来るし...。
時として意見の食い違いはあるけれど、考え方、価値観の違う人間が集まればそれも仕方がないことだと思う。ただ難民キャンプの子どもたちのために活動をしているという思いは同じである。何よりも大事なのはその共通の思いではないだろうか。それがあれば必ず理解し合えるはずだ、と思っている一方で、これからも彼との戦いが続くのかと思うと多少きが滅入ってしまうところもあるが、がんばるしかない!です。
「援助」とは何なのか、どうあるべきなのか、難民キャンプでの日々はこのようなやり取りを行いながら考えているところです。まだ答えは出ていません。このままずっと出ないかもしれません。でもそれでもいいのかもしれないなあと思う日々でもあります。
ミャンマー難民事業事務所 中原 亜紀