現在、SVAが難民キャンプで支援している図書館は全部で22館。1館につき2人の図書館員が働いている。図書館でもっとも大切なのはこの図書館員。どんなに立派な図書館を建てても、どんなに良質な絵本を配布しても、図書館員次第でこれらが全く無意味なものになってしまうからだ。22の図書館は大きさもデザインも同じ、本棚に並んでいる絵本も同じ。しかし開館後の様子は様々である。子どもたちの関心を引くように館内をきれいにデコレーションして明るい環境作りに励む図書館もあれば、壁にかけているポスターや絵が破れていたり、はずれかかっていたりしていてもそのまま。本棚の中もぐちゃぐちゃ。図書館員によってこんなにも違ってくるのだということを実感した。また絵本の読み聞かせ、歌やゲームなどの文化活動を積極的に行っている図書館にはいつも子どもたちが溢れている。暗い雰囲気の図書館で活動にもあまり力を入れていない図書館には、当たり前だが子どもはあまり来ていない。自分だったら、館内が温かい雰囲気を漂っていて、図書館員のお姉さん、お兄さんが温かく迎えてくれる。そして大好きな絵本を読んでくれて、一緒に歌を歌ってくれる、そんな図書館があったら絶対に行きたいと思うはず。
図書館の活動状況を把握するために月に2回、モニタリングというものが行われる。このモニタリングを行うのはSVAの図書館スタッフである。館内はきちんと整備されているか、本の損傷はないか、子どもたちへの活動は毎日行われているかなど、詳細なチェックを行う。また本の紛失や建物の老朽化など、図書館で起きている問題についてもヒアリングを行い、図書館員へ適切なアドバイスをすることが目的である。ここで大事なのはスタッフの観察力と想像力。館内をただ見回るだけではなく、細かなところまでいかに目が行き届くか、そこから図書館での活動や図書館員の様子が伺えるからだ。しかしうちのスタッフの観察力にはまだまだ問題は多い。
私は通常、モニタリングから戻ってきたスタッフから話しを聞くようにしているが、数日後、図書館を訪問するとスタッフの報告にはなかった事実が目に入ってくる。
「ねえ、この絵本、かなり傷んでいるけど、新しいのと交換しないといけないんじゃない?」そう聞くと、 「ああ、そうですね」と返ってくる。
図書館員が毎日つけている活動日誌を見ながら質問をしていた時、読み聞かせのタイトルが毎日ほとんど変わっていない事実を見つけた。
「子どもたちが好きな絵本ってもっとあるのに、どうして同じタイトルばかり読むんだろう・・・」私は疑問に思った。
図書館員に確かめるだろうと思いきや、次の質問に移ろうとするスタッフ。
「えっ?。何とも思わないの!」私はスタッフの次の動きを阻止し、
「何故、毎日同じタイトルの本を読んでいると思うか不思議に思わない?」と聞いた。
「そう言われればそうですね・・・・」それから図書館員に話しを聞いていくと他の絵本はまだ内容をよく覚えていないからといった答えが返ってきた。
でも子どもたちはこれも読んで!とリクエストしてこない?」と尋ねるとそうだと言う。
本来図書館員は図書館にある全ての絵本の内容を知り、子どもたちの要望に応じ、どの絵本でも読み聞かせが出来なければならないはず。この点を再度説明し、時間を見つけて何度も読み返し内容を覚えていくようにと伝えた。
事務所に戻ってからはスタッフに「モニタリング」の意味を再度説明。頭では理解していても、観察力を身に付けるということは簡単なことではない。でも経験を積んでいけばスタッフたちも自らの観察力や想像力を身に付け、図書館員にとってすばらしい先輩となっていってくれることだと思う。そして図書館員が子どもたちにとってなくてはならない存在になっていってくれることを心から願う。今はまだ学び途中の図書館員たちではあるが、皆、図書館での仕事を心から愛するようになってくれている。そして子どもたちのことも。
そんな図書館員たちの中の一人に話しを聞いた。最後に紹介したいと思う。「図書館員になって以来、私は図書館とは、図書館員とは、ということを学びました。これからも子どもたちのために最善をつくして働きたいと思います。何故なら、子どもたちは私たちの国を築く新しい世代であり、彼らの成長に関われることは非常にすばらしいことだと思うからです。個人的には、図書館は子どもたちの能力を高めることができる施設だと思います。本は多くの知識を与え、彼らに新しい生活や生き方を提示することができます。また人格形成にも影響を与えるでしょう。私たち大人も、子どもたちに正しい道を指導することができます。子どもたちは、これまで知らなかったことを知り、いつも絵本のことを聞いてきます。わからないことがあると何なのかをたずねてくるし、知らなかった物の名前を知ることができるようになりました。子どもたちが成長するというのは分からないことを尋ねてくることだと思います。今では、図書館は本当に難民キャンプにとって重要な施設です。私は、世界中のすべての国、すべての学校に図書館は必要だと思います。人々はいつも幸せだとは限りません。そんなときに若い人や大人たちが図書館に来ることができたら、と思います。図書館は、すべての老若男女にとって希望の一つです。」
ミャンマー難民事業事務所 中原 亜紀