大阪外国語大学ビルマ語専攻3年
西野佳世
私がこのプログラムに応募したのは、大学で勉強したビルマ語とタイ語を使って、タイ側のビルマ難民キャンプの実態を知りたい思いからでした。しかし、実際にメーソットに滞在して調査をするにあたり、まず言葉の面での問題にぶつかりました。初めは、スタッフとの意思疎通が円滑に行えずに落ち込み、口数も減っていました。しかし彼らの中には、カレン語、ビルマ語、タイ語、英語の四つの言語を話せる人もおり、タイ語で通じなければビルマ語に換えて伝えることもできました。複数言語の運用能力を持つ若いスタッフ達が事務所で絵本の翻訳やキャンプで活動するのを見て、驚くと同時に尊敬・感動しました。
研修中に私が訪れたキャンプはヌポ、ウンピアム、メラ、メラマルアンキャンプの四つです。とても貴重な体験が出来ました。中でも一番印象的だったのは、メラマルアンキャンプで行われた、新図書館の開館セレモニーです。開館前の準備中、装飾に使う折り紙を折っている時に、私が折っていたものを図書館委員の皆さんは初めて見たようでした。私は彼女たちが日常使っているカレン語を話せないので、ビルマ語と身振り手振りで折り方を教えました。そして当日は私もカレン人の服装でセレモニーに参加しました。図書館前の通りでは、子供たちによる踊りや竪琴が披露され、式が終わると、彼らはどどっと図書館の中に駆け込み、あっという間に床が見えなくなるほどぎゅうぎゅう詰めになりました。入れなかった子供は、図書館の裏手に回って、竹でできた壁の隙間から背伸びをして覗いて見ており、とても楽しそうに笑っていました。皆、興味津々のきらきらした目で、スタッフによるゲームや絵本の読み聞かせ、紙芝居、人形劇等を見つめていました。全ての企画が終了すると、子供たちは部屋の周囲に並べられた本を取り床に座り込み、数人で頭をつき合わせながら仲良く読み始めました。見ている私にも子供たちの喜びが直に伝わってきました。天井を見上げると、私の作った折り紙がぶらさがっています。これは私がここに来た証となるのでしょう。そう思うと一層嬉しくなりました。
一方、ウンピアムキャンプに行った時にも印象的な出来事がありました。ここでもまた、訪れた私たちを歓迎して色々な踊りや歌、遊びなどの披露があり、絵本の読み聞かせをしていた若い男性は、20年前に越境してきたといいます。その彼の片足は義足でした。自分と年の近い彼が、幼少の頃に足を失ってしまったのか...、これまでどんな辛い思いをしてきたのだろう-と考えると胸が詰まる思いでした。しかし彼は誰よりも明るく生き生きとした表情で絵本を読んでいました。彼の話すカレン語は私には全くわかりませんが、その話しぶりや子供たちの反応を見て、とても楽しい気分になりました。
今回、私は難民の使用言語に関する問題を調査しましたが、その中で彼ら民族としての団結意識、教育に対する意欲の大きさが強く現れていました。先に綴ったような貴重な体験は、楽しかった、嬉しかった等、全て感じたままの受身的感想ですが、アンケートから彼らの笑顔の裏に隠された一人一人の悩みをも読んでいくと、いつまでも受身的ではいけない、これから私にできることを積極的に探してやっていきたいと思うようになりました。研修は終了しましたがこれからも活動は続けていこうと思います。たった一ヶ月間の研修でしたが、私を支えて下さったSVA東京、メーソット、カンチャナブリ、メーサリアン事務所のスタッフの皆様、また、先に研修に来ていた菊池さんやその他大勢の方々にも大変お世話になりました。この場を借りて御礼申し上げます。有難うございました。